世にスマートフォンが現れて10余年、この10年で世の中が大きく変わったような気がします。
スマートフォンはとにかく便利。調べたいものはすぐ調べられるし、カーナビよりも正確に道を教えてくれるし、電車に乗るときや買い物をするときもスマートフォン1台ですべてまかなえる。まさに文明の利器といえるでしょう。
しかし、ふと辺りを見渡してみると、街ゆく人たちはみな前を向かず、斜め下の青白い光を見ながら歩いています。例えば電車に乗ると、みんなが小さな端末とにらめっこし、端から見ると少し滑稽にも見える光景です。この10年で、街の(特に人間の)風景が大きく変わってきました。
私は読書が好きで、出かけるときは必ず1冊か2冊の本をかばんに忍ばせ、電車の中やバスなどを待っている間は常に本を読んでいます。
本は、私を知らない世界にいざなってくれます。いざなうなんて言葉を使うのは、ドラクエ3の「いざないの洞窟」以来な気もしますが、それだけ自分にとって読書は特別なもので人生の中での数少ない幸せなひと時です。
スマホも知らないことを教えてくれるという意味では似ているかもしれませんが、本と大きく異なるのは、スマホで教えてくれることは「自分が知りたいことのみ」であることです。自分で知りたいことを検索して、満足いくまで答えを探し続けます。もちろん、図鑑や辞書などの本もその類いですが、図鑑や辞書はさまざまな情報がそこここに散在しているので、本来自分の知りたいこととは別のことに没頭してしまう、いい意味で気が散ってしまうのです。
そこが本のいいところだと思います。
専ら、私はKindleで読書をすることのほうが多いです。というのも、紙の本では今自分がどこまで読んでいるかが分かってしまい、特に小説だと「あともう少しで終わってしまう」と余計なことを考えながら読んでしまうからです。Kindleだとそんなことはなく、ページをめくる煩わしさもないので紙の本より物語に没頭できます。
Kindleで読んで、面白かったものは紙の本も買う、そんな風にして家の本棚を埋めていっています。Kindleを持っているのに毎日かばんに本を忍ばせているのは、本の重みが心地よいからです。
コロナで身動きがとれない日々はこれからも続くでしょう。本棚に眠っている本を手に取って、その世界に入り込んでみてはいかがでしょうか。